これまでクロカジキ、シロカジキ、マカジキ、バショウカジキ、フウライカジキと、国内で狙える6種のカジキのうち5種をキャッチされていた大谷さんにとって、残す最後の1種がメカジキであった。その念願の6番目の魚種を、6月6日に愛艇《ウルフ》でキャッチされたのである。この数字の並びに、なにやら“天使のささやき”を感じないでもないが、とにもかくにも国内で狙える全てのカジキ魚種をキャッチされた“最初のアングラー”として、大谷彰宏さんの名前は日本のビルフィッシング史に刻まれることになった。

クロカジキ
大谷さんはクロカジキの大物狙いで有名だ。これまで与那国島沖で、この326sを筆頭に280s、278sの大物を記録している。現在、グランダー(1000sオーバー)に最も近いアングラーの一人であることは間違いない

メカジキ
これが今回キャッチした6番目の魚種、メカジキ

ベイビーサイズながら、紛うことなきメカジキの雄姿

フウライカジキ
狙って釣るのは難しいフウライカジキを、一昨年のJBTK(串本)で記録したことが今回の記録達成の大きな弾みとなった

バショウカジキ
これは2005年9月19日に与那国島沖で記録した41sのバショウカジキ

マカジキ
大物狙いの大谷さんにとってマカジキは少々物足りない存在だが、今年はBOL西日本の初物として4月26日に和歌山の椿沖でも記録している

シロカジキ
これは2010年4月30日に与那国島沖で記録した183sのシロカジキ
国内のフィールドに限定せずに語れば先達、高橋一郎さんが1990年に達成した“9ビルフィッシャー”の偉業があるが、これは国内外で狙える上記6種のカジキに、ベネズエラで記録したニシマカジキ、ニシクロカジキ、ニシバショウカジキを加えたものである。
高橋さんが“9ビルフィッシュ”の記録を申請した時点でのメカジキの記録はハワイで達成されたものであったが、その後、国内で“6ビルフィッシュ”を達成することを目標に、新たな活動を開始されたことは記憶に新しい。
6種のカジキで難易度の高いのはメカジキとフウライカジキであるが、国内のフウライは運を味方につけないことにはなかなか達成できるものではない。
結果、その手始めとして、国内6種のカジキのうち、難易度の高いメカジキのフィールド開拓とメソッド、ストラテジーの確立を目指して、高橋さんは狙い定めた与那国島沖での精進を開始された。それは確かな実績となり(本誌BIGGAME#029参照)現在、メカジキの日本記録では独壇場の活躍を見せている。
今回の大谷さんの記録も、高橋さんと《暁丸》の尾野文建船長が、与那国島で共に開拓してきた「ソードフィッシング」の延長にあるもので、まさに情熱の連鎖が生んだ“国内初の6ビルフィッシャー”の誕生に心からの祝福を贈りたいものである。
国内トーナメントも、今週末からの『サムズカップ』を皮切りに、その幕が切って落とされる。
長い冬眠から春眠に至り、なかなか暁を覚えなかったボンクラ頭が、ようやく覚醒してきた次第である…。